過去ログ - 長門「ユッキー……私の事を呼ぶならそう呼んで」
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5:名無しNIPPER[saga]
2015/05/17(日) 23:01:01.49 ID:Flc7T4o40


長門有希は孤高の人だった
誰とも何も、必要最低限の会話すらしない。
授業中指されても答えを指差すか黒板に書くだけ。
それでも促されたときは過剰に無駄を省いた台詞でブリザードを巻き起こした。
彼女の台詞は400字詰め原稿用紙一行、いや半行を超えることすら稀なのだ。
 
また、彼女は謎の多い人物でもあった。
その数々は細分しても七つもないが、クラスの局地では長門七不思議とされている。

というわけで不思議その一。
徹底した無表情。クールとかそういうレベルじゃない。
入学からこっち、クラスの誰も彼女が顔筋をぴくりとも動かしたところを見たことがないのだから驚嘆に値する。
果たして、そんなことが人間に可能なのだろうか。

不思議その二。
やっぱり無口。
誰が何を言っても無視される。
そのせいで我がクラスでは長門有希が発言した日はいいことか悪いことかどちらかが起こるという阿呆らしいジンクスまで根付いてしまった。

不思議その三。
休み時間は消失する。
文字通り、チャイムがなると同時に消えていなくなるのだ。
そして本鈴がなる頃にはまた、いつの間にか席についている。
彼女が教室のドアをくぐるところは、これまた誰も見たことがない。

不思議その四。
出自不明。
といったら仰々しいが、つまり出身中学を誰も知らないのである。
暇な奴が教師から得た情報によると、どうも県外からの越境入学らしい。
まあ、大方親の仕事の都合で引っ越してきたのだろう。
なんか段々不思議と言うには苦しくなってきたな。
しかし、何となく長門有希のこととなると不思議っぽく思えてしまうのだから不思議だ。

そんな得体の知れぬ人、長門有希にも楽しみらしきものがあるらしかった。
本である。
彼女は入学当初から一日も欠かさず本を読んでいた。
それも人一人撲死させかねない分厚いやつを。
一度は辞書さえ熱心に読んでいたほどだから、度を越えた読書家なのかもしれない。
何が面白いのか、昨今の風潮にあわせ活字アレルギー気味の俺には理解不能だが、気のせいか活字を追う彼女の目は輝いて見えた。
流石にその小さな鼻をくっつけて読むような真似はしなかったが、そのままページをむしゃむしゃやってしまったとしても俺はさして驚かなかっただろう。
それほどの気迫が彼女にはあった。
クラスメイトもそういう雰囲気を感じてか、読書中には、彼女を中心に逆ドーナツ型の空間が出来上がるのが常だった。

かといって彼女にアプローチをかける人間が全くいなかったと言うわけではない。
まず、彼女のビスクドールじみた容姿に惹かれ血迷ったクラスの男ども。
更にクラスになじむ気配すらない彼女を見かねた担任の岡部教諭。
結果は……傍で聞いているこっちがいたたまれないほどの凄惨さだったとだけ言っておこう。
そして俺は彼女の語彙に「そう」と「別に」と「割と」しかないのを知った。





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