13: ◆and2h/yWHc[saga]
2015/05/26(火) 01:06:59.62 ID:fTdSsP0O0
-憎悪と愛と-
「久しぶりだな、神通」
提督は、やはりいつもと同じ様に執務室のデスクに座っていた。
「ええ、お久しぶりです提督」
「俺を殺しに来たか」
「えぇ、貴方だけは、私の手で殺したかったので」
私の妹を殺した相手。復讐を願った相手。
「そうだろうな」
そう言って提督は少し笑った。何故この人は笑ったんだろうか。
「何を笑っているんですか」
「やっと死ねると思うと嬉しくてな、それも神通の手で」
「私の手で殺されるのが嬉しいんですか」
「ああ、他の誰でもない、神通の手で殺されるのが誰に殺されるより嬉しい」
「それで貴方の罪が精算出来るとでも?」
そう、死ぬ程度で精算出来る罪ではない。しかし、殺さなければ私はまた弱くなってしまう。
「まさか、そんな訳がないだろう」
「では、何故私の手で殺されるのが嬉しいのですか」
「神通、お前が俺が唯一愛した相手だからだよ」
「奇遇ですね。私もそうでした」
そう、昔この人を愛してしまった。そして弱くなってしまった
「過去形、か」
「ええ」
そう、私が提督を愛してしまったのは昔の話。今は憎悪と復讐の対象であり、最も殺したい相手。
「ならなぜそんなに悲しそうな顔をする」
一瞬目の前の提督が何を言っているかわからなかった。悲しそうな顔をしている?私が?
「そんなことはありません」
そう自分で言って気付いた。声が震えていることに
「いいや、そうだね。俺にはわかる」
何故、貴方に私の事がわかる。那珂は貴方の指揮の下、沈んだ。那珂は見捨てられた、救う手立てはあった筈なのに。
「…貴方に何がわかるんですか。那珂を沈めた貴方に何がわかるんですか!」
分かるわけがない、分かる筈がない
「俺も那珂を沈めたくはなかった」
今更言い訳を並べるな、本当に今更…
「今更そんな言い訳は必要ありません。死んでください」
そう言って銃を構えた私の手と声は震えていて、とても弾が当たるとは思えなかった。
「…済まなかった、神通」
何故今更謝る。何故、那珂が沈んだ時に言い訳も謝る事もしなかったのに、今更何故
「私は貴方を殺したい。なのに…貴方はまた私を鈍らせる」
そう、最初に引鉄を引けなかったあの時の様に
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