21: ◆and2h/yWHc[saga]
2015/05/30(土) 23:47:00.45 ID:G7YkCPld0
-叶うはずはない願い-
「提督…」
提督を殺してから、私は弱くなってしまったと思う。何故だろう。何にも身が入らない。
「神通さん」
「空母棲姫さん」
「貴女が貴女の提督を殺した日、何があったんですか」
私が提督を殺した日。復讐を達成した日。
想いを初めて伝えた日。
「私は、弱くなりました。提督を殺してから」
「何故ですか?貴女は提督を殺す事で弱くなることを避けていたはずでしょう?」
「ええ、でも、実際そうではなかった」
「常に予測不可能の事態は起こるものですよ、空母棲姫さん」
「その予測不可能な事態は、貴女の感情によるものですか?」
「えぇ、やっぱり、感情なんて必要ない。こんなに苦しいなら、ない方がよっぽどいい」
そう、この苦しみ。これが提督の残した傷跡、最後の抵抗だったのかもしれない、ふとそんなことを思う。
「…すみません、私には理解出来そうにありません」
「いいんですよ、私達にも感情は完全に理解することはできませんから」
そう、自分ですら、自分を完全に理解することすら出来ていない。
「…私から見て1つ、わかることがあります」
「何ですか?」
「貴女は悲しそうな、虚ろな目をしているように見えます」
「…確かに、そうかもしれません」
復讐は果たした。その代償に愛した人を失った。自分で選んだ選択。でも…
「こんな時には1人で考えてみる事も大切だと本には書いてありました」
「そうですね」
「だから、私は自室に戻っていますね」
「…気を使わせてしまってすみません」
「いえ、いいんです。貴女も私達の仲間なんですから」
仲間、もう私は艦娘ではない。深海棲艦。体こそ艦娘のままだが、もう私は深海棲艦。
「提督…」
もう、叶わない想い。叶わない願い。けれど、もし奇蹟が起きているとするなら
「私を、殺してください。貴方の手で、私が愛した貴方の手で、私を自由にしてください」
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