5:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/23(土) 08:12:56.97 ID:MfcNSvx0o
「ど、どうしたんだこんな時間まで……メール見なかったのか?」
「…………」
「……松本?」
先生は本当にいつも通りであった。当たり前だ、一人で考え込んで勝手に不安に溺れている自分がおかしいだけなのだ。
その澄んだ目に私はどう映っているだろうか。いつも通りに……は映っていないだろう。自分でも目に涙が溜まっているのはわかっている。
「どれ……うわ、手が冷たいぞ。ずっと外で待っててくれたのか?」
「…………」
「……ふむ、悪いことをしたな。送っていくぞ? 一緒に帰ろうか」
荷物を乗せ、自転車のスタンドをあげる。普段なら他愛のない話を私に語りながらでも行なう日常動作だが、私が普通の状態でないことを察してか、無言のままに先生は歩き出した。
―――こんなことじゃいけない。私がひとりでに気を滅入らせているだけなのに、余計な心配をかけさせてどうする。
気持ちを切り替えて、いつも通りにしなければ。しかしそう思うよりも早く、先生は私に気を回してくれた。
「松本、また前髪伸びてきたな。どうする? 私の家に来るならすぐにでも整えてあげるぞ」
「……!」
本当に、気持ちを汲むのが上手い人だ。
今の私はいつも通りの日常よりも、いつも以上の強い想いを感じたいのだった。
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