2: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:27:04.70 ID:WT24WuKIo
彼が生まれ故郷を旅立ったのは暗い小雨の夕方だった。
十三歳とまだ若く、いや幼いといっていいほどで。
不安もきっとあったろう。
彼は当時をこう語る。
「ありゃあ春っつってもまだ寒くてよ、冷たい風が芯まで響く。
だからなるたけ不敵に笑って大股で、ずんずんずんずん歩いていった。
幸いそんなに怖くはなかった。遮るものは何にもなかった。
後ろを振り向いて夜の闇しか見えなくなって、そのとき一度、大きく咆えた。
内容なんざ覚えちゃいねえ。バカヤローかクソッタレだった気はするが。
ぶんばらべりじょんっつーのも案外あり得る。馬鹿、意味なんかありゃしねえ。
それからありがとうってのは絶対ない。あの小さな町に感謝はない。
ただ……それでもなんでか泣いてたな」
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