過去ログ - 周子「5月30日は」フレデリカ「シキちゃんのお誕生日♪」
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8: ◆Freege5emM[saga]
2015/05/24(日) 00:54:02.07 ID:Z5KO306+o

●07

「ま、今はシキちゃんのお話でしょ。シューコちゃんの名推理、披露しちゃってよー」
「推理っていうか、あたしの直感では……」

志希が両親のことを口にした姿を、周子はかつての自分に重ねていた。



「まず、“ちっちゃい頃にお母さんからあの香水をもらった”ってのは、ウソじゃないと思うのよ」
「内容的に、とっさにつくウソじゃないもんねー」

「で、香水瓶をあたしたちからあんなに露骨に隠したのは、あれを見られたくなかったから。
 ただの香水なら、隠す理由は無いから……親御さんのことに、触れて欲しくなかったんよ」

「そういえば、シキちゃんのパパやママについての話って、ほとんど聞いたことないよね」
「“希望を志すから、志希ってゆー”ぐらいかしら。あれだって、親御さんが名付けたとは言ってないけど」



「……志希ちゃんってさ、生まれは岩手だよね」
「そうだね。で、アメリカ行って、ドクターまで飛び級して、つまんなくなって日本に帰ってきて、
 長野でプロデューサーにスカウトされて、今は東京で一人暮らしだってね」

「志希ちゃんが留学するとき、親御さんも一緒に渡米したのか、親戚の人とかに預けられたのか、
 細かい事情は知らないけど……それって、親御さんの立場では、相当覚悟いるやん」
「そーだね。もしかしなくてもそれ、アイドルデビュー以上かも」



「親御さんは、志希ちゃんがアメリカで上手くやってくれる、ってすごく期待してたんだと思う」
「でもシューコちゃん。シキちゃんは“つまんなくなっちゃった”って日本に帰って来ちゃったね。
 これもきっとホントだよ。シキちゃん、面白いかつまらないかについては、絶対ウソつかないし」

周子は、本格的な実験器具と収録で使えそうなアンティークが混じった“シキちゃんラボ”の風景を見た。
そこから、かつて志希がアメリカで歩んでいた化学の道と、今歩んでいるアイドルの道の葛藤を観た。



「だから……志希ちゃんは親御さんのことが後ろめたいんよ」
「後ろめたい? だから、パパママのことに触れたくないってコト?」

「たとえ不本意なものでも……親の期待を裏切るっての、実は重たいもんなんよ」

周子は、かつての自分と今の志希を重ねていた。

「うわぁ、シューコちゃんが言うと説得力があるね♪」
「そこですんなり納得されるのも、なんか引っかかるねぇ……」



周子の見解を、フレデリカは咀嚼するようにウンウンと繰り返し頷いていた。
が、それを不意に止めると、かばんから携帯電話を取り出す。

「ね、シューコちゃん、ちょっと電話かけていい? 確かめたいコトがあるの」
「いいけど……今じゃなきゃダメなん?」
「うん、待っててね……あ、もしもしプロデューサー? アタシだよ、フレデリカだよ!
 少し聞きたいことがあるんだけど、今度のライブで――」

フレデリカとプロデューサーの通話は、数分で終了した。



「ふー、シューコちゃん! これでシキちゃんへのプレゼントが決まったね♪」
「……フレちゃん、あんたナニやったん?」

「関係者枠で、5月30日のライブの席、2つ空けてもらったんだー。
 シキちゃん、案の定パパママを招待してなかったから。
 だからアタシがシキちゃんのパパママを招待するんだ。これがバースデーサプライズだよ!」

会心の笑顔を見せるフレデリカに、周子は一瞬納得しかけた。



が、

「ちょっと待てやフレちゃん、ナニ勝手に話進めとんのよ」

もはや周子からは、いつもの飄々とした色が消えていた。


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