5:名無しNIPPER
2015/06/11(木) 00:02:09.03 ID:kmZ4QHJb0
「あー、いちじょうくんだぁ」
早くも着崩れつつある着物を煩わしそうに振り回しながら、わたし小野寺小咲は、近付いてくる想い人、
いちじょうくんの姿をみとめていた。
艶のある黒髪、すべすべの白い肌。それに触れた一年前の記憶が蘇る。
「ふふふ、また触っちゃおうかなぁ……」
「お姉ちゃんズルいー。私も一条しぇんぱいにぎゅっとしてもらうんだー」
「まー、春ってばすっかりいちじょうくんと仲良くなったのねー。そうね、二人でぎゅっとしちゃおうかー」
想像しただけで、顔が火照り身体が熱くなる。
この熱を冷ますためにも、彼の身体に触れたい。抱きしめたい。脱がしてそして――。
「いちじょうくん、つかまえたー」
「しぇんぱいー私もぎゅってしてくだしゃいよー」
「小野寺……それに春ちゃん……」
聞き慣れたよりも少し低い彼の声が、身体の奥の深いところに響いて心地がいい。
いつも優しい彼の眼差しが、怯えた目つき変わるところを想像すると身体がうずく。
そう、今年もいちじょうくんのことをめちゃくちゃに……。
「……え?」
こちらを見つめるいちじょうくんの目は、怯えた様子なんて微塵も無くて、
それどころか普段に無いくらい鋭く怪しい光を湛えながらわたしたちを見つめていた。
「望み通り、してやるよ」
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