過去ログ - コードギアス 【ロスカラ】
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103:名無しNIPPER[saga]
2015/06/19(金) 07:38:13.89 ID:978zBMZDO
「……?」


いや、もう一人いた。街を歩く人の中に、明らかな異物があった。少女のようだった。すらりと長い手足に落ち着いた服装。被った帽子からは、長い緑色の髪が見えていた。その驚くほど端正な顔には、ライと同じ無表情が貼り付けられている。


彼女だけが、他の世界と隔絶されているようだった。彼女の周りだけ、時間の流れが違うようだった。


「…………」


しばし、目を奪われる。見とれてしまっていた。周囲の音が遠ざかっていく。彼女以外、目に入らない。他の感覚は揃って仕事を放棄していた。


思わず腰が浮く。自分が立ち上がっているのに気付いたのは、少女の姿が路地の曲がり角に消えてからだった。


追わなくては。話をしなければならない。彼女はきっと、記憶に関する事を知っている。そんな確信があった。


走り出す。何人かの人にぶつかった。女性が短い悲鳴をあげた。会社帰りのサラリーマンに怒鳴られた。さぞ迷惑な存在だっただろう。足は止まらない。目はあの曲がり角に向いていた。


後にして思えば、少年はこのときに初めて、必死という言葉を知ったのかもしれない。


大丈夫、間に合う。相手は徒歩だがこちらは全力疾走だ。相対速度を計算。間違いなく追いつける。


この曲がり角を過ぎれば──


「く……っ」


いない。少女の姿は消えていた。同時に、周囲の音が戻ってくる。思考が冷静さを取り戻す。一瞬の事だった。こういう感覚を、夢から覚めたようだと言うのだろう。


幻影だったのだ。そう思わざるを得なかった。それくらいに、現実離れした感覚だった。




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