106:名無しNIPPER[saga]
2015/06/19(金) 11:53:38.74 ID:978zBMZDO
連れてこられたのはクレープを販売している出店だった。店主の男性はどう見てもブリタニア人では無い。イレヴンだろう。
スザクが注文をすると店主は手早く生地を焼き上げていく。見事な手際だった。
「職人技っていうのは、こういう事を言うんだろうね」
「……そうだな」
クレープ自体は複雑な料理では無い。小麦粉と牛乳、バターなどを混ぜた生地を鉄板の上で焼き、その中に生クリームなどを入れて完成させる。
しかし、店主の手付きには淀みが一切無い。簡単な工程を何百、何千回と繰り返してきた者の技術。そこには歴史があった。とても真似出来ないと、ライは思った。
適度な焼き目がついた生地を取り出して、中に生クリームとチョコレート・ソース、ベリー系の果実を加え、折りたたむ。それを紙で包み、店主はスザクへ二人分のクレープを渡した。
丁寧にお礼を告げ、こちらへ戻ってくるスザク。だが途中で、何かに気付いたような表情になった。
「あ! そういえば君の好みを聞いてなかった!」
「……?」
「あ、甘いのは好きかい?」
「ああ。問題はないが……」
「良かった。じゃあ、これ」
スザクは右手に持っていたクレープを差し出してくる。
「……僕にか」
「ノートのお礼。食べてみて」
受け取り、恐る恐る口にする。生クリームの甘さとチョコレートの香り、果物の酸味が程よく広がる。美味だった。適当に混ぜただけではこうも上手くいかない。材料の配置、配分までこだわった一品だ。
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