127:名無しNIPPER[saga]
2015/06/20(土) 20:52:03.20 ID:SeLyu7oDO
何よりライという男は、とても冷静で口数が少ない。ほとんどの会話を「すまない」「分かった」「ありがとう」で済まそうとする。
記憶喪失という事に対する動揺もほとんど無い。自分の現状をわりとすんなり受け入れているようだった。自分が何も無い、空っぽの存在だと理解しているから、彼は誰かに助けを求めない。同情も必要ないと言わんばかりだ。
そういった、ある種の潔さ、孤高さはルルーシュを苛立たせた。本当は戸惑っているくせに。本当は怖がっているくせに。ライは何も口しない。
一人で何とかしようとしている事など、見ていれば分かるのだ。
警戒心から始まった監視だった。充分な効果が挙がったと言える。ライという男に現状、危険性は見られない。それは確かだった。
そして、今日。
ナナリーとライが一緒にいるところを目撃してしまった。楽しそうに喋っている。今までは接点が殆ど無かったはずの、あの二人が。
邪魔しようとは思わなかった。ルルーシュが以前に釘を刺してから、ライは律儀にナナリーとの接触を避けていた。あの時はまだ彼の事を警戒していたのだが……。
しかし今は咲世子もいる。何よりナナリーが楽しそうだった。花が咲いたような笑顔。スザクが編入してきたと聞いた時以来の、飛びきりの物だった。
ナナリーは誰にでも優しく、また聡い子だ。誰にでも分け隔てなく接するが、その実、相手の本性を感じ取る事に長けている。ほとんど初対面で、あんな表情を見せる事は極めて稀だった。もしかしたら最短記録かもしれない。
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