202:名無しNIPPER[saga]
2015/06/26(金) 21:08:02.37 ID:AcBC3WIDO
夕暮れ時。雲一つ無い空は真っ赤に染まっている。ライは買い物袋と領収書を生徒会室に置いてから、午後の授業を受けていた。
放課後は生徒会があったはずだ。帰りのホームルームが終わった後もリヴァルと雑談をしていたせいで、遅刻の危険性がある。まずいと思いながら、中庭の付近を走っていた。
「ん……?」
中庭をまたぐ廊下を、一人の少女が歩いているのが見えた。赤い髪に、穏やかな美貌。お嬢様らしくビシッと着こなした制服はとても似合っていた。最近、親衛隊が増え続けているその美少女は、ライの世話係主任でもある。
カレン・シュタットフェルトだ。
両手には大量の書類を持っている。恐らくは生徒会で必要なものだろう。あれではまともに前も見えないに違いない。
カレンは病弱だ。授業を良く休むし、通院もしているらしい。そんな彼女に、無理はさせられない。
ライが彼女に駆け寄ろうとした、その時だった。
突風が吹く。カレンの持っていた書類が風によって飛ばされた。咄嗟に抑えたが、何枚かは流されて行ってしまう。
「はぁっ!」
鋭い声だった。声の主は手近な壁を蹴り、宙に舞う。そして一際高いところにあった紙を取り──着地。持っていた大量の書類を全く零さない、見事な三角飛びだった。
「…………」
「…………」
繰り返すが、この中庭にはライと、病弱なお嬢様であるカレンの二人しかいない。これは間違いなかった。そしてライは、見事なまでに傍観者だった。
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