21:名無しNIPPER[saga]
2015/06/14(日) 13:25:46.51 ID:QEdX3JPDO
夜のトウキョウ租界。高層ビルが乱立した街道を、ライと二人で歩く。世話係の最初の仕事は、租界の案内だった。
良く整備された夜の街を異性と並んで歩くというのは、普通の女子ならそわそわするシチュエーションだ。
今のライはアッシュフォード学園の制服を着せられている。多分、見た目ならそこらの王族にも負けないだろう。かなりの美形だ。
しかし、カレンの対応はひたすら事務的だった。色気などかけらも無い。問題はこの、無表情で無気力な同行者にある。
「……ここが公園ね。そこの道を右折すれば、病院へ行けるから」
「分かった」
租界は広い。放課後に徒歩で回っても、行けるところなど限られている。街の案内など簡単だと思ったが、これでは何日掛かるか分からないと辟易していた。
おまけにこの同行者だ。こちらが何を言っても空返事ばかり返してくる。常に三メートルほど離れている距離も、なんだか無性に苛ついた。警戒されているように思ったからだ。
こんな調子では成果など出るわけが無い。カレンは早々に見切りをつけ、学園周辺の主要な施設を適当に紹介した。これだけ知っていれば生活には困らないだろう。本当に分かっていればだが。
既に遅い時間だ。今日はこんな所で良いと思い、振り返った。気になるのは、開いた三メートルの距離。いや、最初よりもっと開いている。
それはあまりに失礼ではないのか。カレンはしとやかな令嬢の仮面を一瞬だけ外し、語気を強めた。
「……私の案内、つまらなかった?」
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