23:名無しNIPPER[saga]
2015/06/14(日) 14:08:43.55 ID:QEdX3JPDO
「ま、待って」
何か考える前に、そう言っていた。ライが振り向く。その表情からは感情が窺えなかった。
「どうした?」
「あの……」
月の光が彼を照らしていた。珍しい銀色の髪が光を反射し、その姿をとても儚げなものに思わせる。
「迷惑……なんかじゃないから」
「……そうか」
「明日も、同じ時間に案内するから」
それを言うには結構な勇気が必要だった。もう良いと言われれば、この関係は終わりになる。カレンにとって、お世話係という役職は決して重要ではなかったが、そんな事はどうでも良かった。
「……いいのか?」
「もちろん。お世話係だもの」
なんとか余裕を持って微笑む事が出来た。そうすると彼は、
「わかった」
素直に頷いてくれた。
「じゃあ、また明日、ね」
「ああ。また明日」
ライは去っていった。その背中を見送り、カレンは空を見上げた。月が夜闇を照らしている。人を落ち着かせるような、優しい光だ。こうして眺めるのは何年振りだろうか。
世話係を本格的に行うとなれば、きっと忙しくなるだろう。今までより遥かに。
「……まあ、いっか」
なんとかなるだろう。そんな風に思える。どこか晴れ晴れとした気持ちだった。嫌悪している自宅へ足を向ける。いつもより足取りは軽かった。
なんとなく、明日の学園が楽しみになったのが原因かもしれない。
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