280:名無しNIPPER[saga]
2015/07/03(金) 01:33:17.23 ID:XSwai4zDO
カレンは呆気に取られたような表情で振り向く。
「珍しいわね、あなたから提案なんて。初めてじゃないかしら」
「そうだな。君が何か考えてくれていたなら悪いが……」
「いいわよ。自分から行きたいなんて、何か思い出せるかも」
カレンはこちらの提案を尊重してくれるようだ。彼女に代わり、今度はライが前を歩く。こうした散策では初めてのことだった。
近くの駅からモノレールに乗り(結局カレンに教えてもらった)、一五分ほど乗車してから租界の外縁部付近で下りる。
この辺りは租界でも珍しく、建物や道路が整備されていない。聞くところによると、数年前に放置された開発地帯のようだ。
人気の無いひびだらけの歩道を歩き、寂れた公園に入る。
「ここ?」
「ここから見える」
この位置からは、租界の外側が一望出来た。
倒壊したビル群、穴だらけの道路、瓦礫の海。それらを覆い、空まで暗くするのはとても濃い塵。所々でうごめく小さな影は、きっと人間のものだろう。
二〇分前までいた明るく華やかな都市部と比べ、眼下の光景はあまりに暗く、凄惨だった。
「……ゲットーね」
「この光景はなんだ」
「え?」
図書室で読んだ本を思い出す。脳裏によぎるのは美しい光景、清潔な空。そして桜の木。
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