283:名無しNIPPER[saga]
2015/07/03(金) 02:23:20.51 ID:XSwai4zDO
「力を与えず、ただ生かしておく。容易に支配し、統治できる程度に」
ライはもう一度、ゲットーの方を見た。うごめく霧の中にいる人々。決して少なくはない。だがやはり、生気の欠片も感じなかった。まるで亡者のようだ。
「知ってる? ライ。イレヴンは役所に申請すれば、名誉ブリタニア人になれるのよ。……名誉ブリタニア人、おかしな話よね」
ことさら、カレンの声に怒気が含まれた。ここにはいない、遠い誰かの事を投影しているようにも見える。
怒りが、膨らんでいくのが分かった。
「ここではブリタニア人であるかどうかが、その人の明暗を分けるの。生きる権利があるか……をね」
「……カレン」
「いったい何が違うの? 何が違う! あそこに暮らす人々と、この租界の住人と! イレヴン……いいえ、『日本人』と『ブリタニア人』。どうして支配し、支配されないといけないの!?」
目が眩むような、激しい感情の発露だった。今まで見せてきたものとは180度違う、苛烈な姿。何もかも呑み込んでしまうような怒りと憎悪。
だが、どうしてか。カレンの変貌ぶりに、ライは大して驚いていなかった。それどころか、彼女の言葉が理解出来る。彼女の怒りが、理解出来た。
「カレン」
「……あ」
ようやく終わりが見えた頃、ライはもう一度、彼女の名を呼んだ。頭が冷えたのか、カレンは我に返り──そして慌て始める。
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