310:名無しNIPPER[saga]
2015/07/07(火) 23:31:34.24 ID:pJv3maSDO
その通りだ。ライを動かしているのは、紛れもない義務感だった。
"記憶を取り戻したい"のではなく、"記憶を取り戻さなくてはならない"と思っている。ずっとそうだ。この学園で目を覚ました時から、ずっと。
考えてみれば、すとんと腑に落ちた。極めて簡単な事だった。
「駄目……でしょうか」
そう訊くと、ミレイは首を振った。
「駄目、ではないと思う。でもね……不謹慎だけど、あなたには記憶の事より、この学園での思い出を大切にしてほしいの」
「…………」
「やっぱり難しいわよね」
ミレイはこう言ってくれているが、やはり甘えるわけにはいかない。彼女が良い人であればあるほど、その決意は強固なものとなる。
「でも……」
「?」
「記憶を取り戻したら、普通の生徒として、この学園の一員になりたいと思っています。……これは、本当に」
都合の良い話だと思ったが、それでもミレイは笑ってくれた。
「なら、良し。今日のところはね」
「……ありがとうございます」
ステンドグラスを通過した光が七色に変わる。その柔らかい光を背に、ミレイ会長は笑みを浮かべていた。
この人は、幸せになるべき人だ。
そう、ライは強く思った。
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