362:名無しNIPPER[saga]
2015/07/23(木) 21:47:53.60 ID:jVTaH5bDO
「……そう、分かったわ」
どのくらい、そうしていただろうか。カレンがやっと口を開いた。その口調や表情からも、やはり考えを窺い知ることはかなわなかった。
「すまない」
気分を害してしまっただろうか。提案への断り方も分からないせいで、こんなことすら心配になる。
「あなたがそう言うなら、私は一人で行くから」
「ん……ちょっと待ってくれ」
意味が分からない。ライの記憶を探すためなのにも関わらず、本人不在でも構わないとは。
「駄目だ。危険だと言っているだろう」
聞こえないとばかりにカレンはこちらに背を向けた。後ろ腰に手を組み、三歩前に歩く。
「あなたと一緒にゲットーを見た時、私も興味が湧いたのよ。だから、記憶探しっていうのは……ただの口実」
「だが……」
確かにあの時、カレンからは日本寄りの発言が噴出していた。ゲットーを、日本人を直に見てみたいと思うのは、不自然なことではないだろう。
しかし──
「私自身が行きたいんだもの。それを、あなたは止められる?」
「……無理だな。僕に君を束縛する権利なんか無い」
彼女を止める理由はなかった。本当に行きたいのなら、カレンは一人でゲットーに向かうのだろう。
「……わかった。僕も行くよ」
弾よけくらいにはなるだろう。そう思ったが、口には出さなかった。
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