388:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:03:33.75 ID:TYp+eNeDO
目を覚ました。
カーテンの隙間から覗く暖かい日差し。無駄に大きいベッドの上で、少女は身じろぎした。体を起こし、右膝を立てた状態で頭を抑える。頭痛がした。
ぼんやりとしながらも、辺りを見回す。
広い部屋だった。机も椅子も、テレビも、クローゼットも、何もかもが"あの家"の家具より大きくて機能的だった。生活環境としては最上の部類に入るだろう。
頭が痛い。
素足のまま床に降りる。柔らかい絨毯の感触が心地よかった。この上で眠れそうだと思った。むかし使っていた布団よりも、少し汚れればすぐに破棄されるこの絨毯の方がよほど上等だった。
頭が痛い。苛々する。
少女の出で立ちは薄手の黒いタンクトップと同色のショートパンツだけというシンプルな物だ。ブラジャーは着けていない。寝苦しいし、すぐにサイズが合わなくなるから嫌いだった。
「……最悪」
老婆のような声で呟く。あの夢のことだ。しばらく忘れていたのに、最近また良く見るようになった。平穏な日常。大好きな家族。夕焼け空と帰り道。兄の背中。
未練があるのだろうか。決意が、覚悟が弱くなっている。憎悪と怒りの灯が風に揺らめいているのが分かった。
頭が痛い。胸が苦しい。苛々する。
クローゼットを開く。中にはアッシュフォード学園の制服一式が納められていた。今日は休日だが、これを着なければならない。
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