389:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:05:37.27 ID:TYp+eNeDO
制服の掛かっているハンガーを取ろうとして、手を止める。なんだか気が進まなかった。これを着たら、自分は貞淑で体の弱いお嬢様になってしまう。この服をこれ以上着ていたら、もう戻れなくなってしまうような恐怖感が胸中で渦を巻いた。
あの人達のせいだ。賑やかな生徒会室。初めは面倒事だと思っていたが、段々とほだされていっているのが分かった。だから意図的に避けていたのに、あの少年が現れてからは、目に見えて足を運ぶ回数は増えていた。
良くない傾向だ。考えが甘くなっている。牙が鈍っている。これでは敵が倒せない。兄の仇を討つことが出来ない。
頭が痛い。酷い頭痛だ。体の奥底から響く怨嗟の声が、日に日に大きくなっていく。
やめろ。戻れない。どうせ無理だ。お兄ちゃん。復讐しろ。甘えるな。化け物。思い出せ。弱虫。許すな。
容赦なく責め立てる怨嗟の声。止む気配はない。この状態を改善しない限り、永遠に続くのは明白だった。ならばどうするのか?
もう答えは出ている。
昨日、なぜ彼をあんな場所──シンジュク・ゲットーなどに誘ったのか。不衛生で危険な場所。死ぬ可能性だってあるのに。
"あの人"と出会った場所だからだ。黒い仮面とマント。あの人が現れて、導かれて、全てが上手く行き始めている。
そこに、"彼"を連れて行く。銀の髪、蒼い瞳。彼と出会って、手を引いて、何かが上手く行かなくなってきている。
この行為に、どういった意味があるのか分からない。思いついて、口に出した時には決意は固まっていた。これで良いのだと思っている。
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