390:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:06:53.36 ID:TYp+eNeDO
「……最っ低」
再び呟く。今度は自分に向けた言葉だった。何も知らない彼を連れまわして、間違いだと分かっているのに、この手を離せない。血に濡れた、汚れた手を。
だから、あの場所に行こうと思った。このままではいけないのは分かっている。シンジュク・ゲットーならば、何かが変わる気がした。少女自身の運命を劇的に変えた場所だ。また、何かが変わるかもしれない。それも良い方向に。
口元に自嘲の笑みが浮かんだ。どこまでも自分勝手な、都合の良い考えだ。反吐が出る。
自己嫌悪は終わらない。何もかもが煩わしかった。開いたクローゼットはそのままに、部屋の一角──大きな姿見の前までやってくる。鏡には白を貴重とした、清潔感と高級感の同居する広い一室が映し出されていた。
その中に、汚点が一つ。自分の姿だ。ほっそりとした肩。そこから伸びる細く引き締まった腕。飾り気の無い黒いタンクトップの下からは、押さえつけられていない豊かなバストが存在を主張している。
くびれた腰。理想的な造形のヒップと、その形を忠実に再現するショートパンツ。すらりと長い足。まだあどけなさが残っている顔。
どこからどう見ても、立派なブリタニア人だ。
外見は。
赤い髪、白い肌、空色の瞳。どれもこれも、望んだ色ではない。
"一緒"が良かった。そうすれば、こんな部屋にいなくても住んだのに。こんな悩みとも無縁でいられたのに。
1002Res/860.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。