399:名無しNIPPER[saga]
2015/07/31(金) 18:28:08.90 ID:TYp+eNeDO
「驚いたな。まだ食べるのか」
カレンの手元にある食器を見て、ライは言った。どうやら自分ではなくカレン自身の追加注文と受け取ったらしい。二人の傍らに立つ女性店員もまた、目を丸くしていた。
かあっと顔が熱くなる。これではまるで、私が大食漢のようではないか。
「あ、あなたの分でしょ……!」
椅子から腰を浮かせ、ライを睨みつける。そのまま店員に視線をスライドさせると、彼女は恐怖のあまり短い悲鳴をあげた。ちょっと傷つく。
「注文は以上で」
「は、はひっ。かしこまりました!」
店員はぺこりと頭を下げて逃げていく。注文内容の復唱もしなかったところを見ると、かなり慌てていたらしい。
「まったくもう……」
いらぬ恥をかいてしまった。少しの憂鬱と疲れを伴って、カレンは椅子に座り直した。ライと一緒にいると、こういった事は日常茶飯事だった。今のように外ならまだ良いのだが、学園内だと困る。病弱なお嬢様という"仮面"がいつの間にか剥がれ落ちてしまうのだ。
二年近い期間、必死で作り上げた物が訳もなく崩れ、隠している素顔が露わになる感覚。焦燥に駆られ、ひどく不安になるが、不思議と嫌いではなかった。
これも全て、ライの持つ独特な空気、キャラクターのせいなのかもしれない。良く分からないが、とりあえず彼のせいにしておこう。
運ばれてくるサラダとスープを眺めながら、カレンはそう思った。
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