409:名無しNIPPER[saga]
2015/08/05(水) 00:05:31.66 ID:h3ZjdUpDO
「……その日、僕は夕方の公園でベンチに座っていた。三時間近く街を歩いた後の、ささやかな休息だった」
その光景は容易に想像出来る。夕焼け空を眺めながらぼんやりしていたのだろう。暇な時、ライは良く空を見上げている。
「しばらくして、近くから女の子の声がした。ニャニャーとか何とか……。野良猫に話しかけているんだと思っていたし、それは外れていなかった」
彼の語り口はどこまでも落ち着いていた。淡々としているが、自然と耳を傾けてしまう独特の響きがある。
思えば、この少年がここまでの長台詞を喋るのも珍しい。
「数分ほどその声は続いていたんだが、そこで僕は気づいた」
「……?」
ライはそこでひとまず言葉を切った。
カレンはなんとなく、ソーサーの上からコーヒーの入っているカップを取って口元に運んだ。シロップもミルクも入れていない中身はすっかり温くなっていたが、気にならなかった。
「声がこちらに向いていたんだ。見てみると、さっきの子がいた。やはり、僕に話しかけていたみたいで、目が合った」
そこで目を伏せる。少女はライに向かって「ニャー?」「ニャニャー!」と話しかけてきたらしい。不思議に思って見ていると、彼女ははっと気づいたような表情になり、こう言った。
『あら? ごめんなさい、間違えてしまいました』
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