414:名無しNIPPER[saga]
2015/08/05(水) 00:11:00.74 ID:h3ZjdUpDO
「では、お願いします」
あっさりと注文を終え、アルバイトが去っていく。どことなく満足そうな様子のライは、静かに食事を再開した。
またも状況から取り残されていたカレンはじろりとライを睨んだ。
「……なに、今の」
「なに、とは」
「なんで私に確認したの」
「君が言ったんだろう。食べたいから普通に注文する、と」
「…………」
つまり、今の注文はカレンのための物だったということだ。既にモーニングセットを平らげている、カレンのための。とんだ大食いである。あのアルバイトの曰くありげな視線の意味も分かってしまった。
「……もう、この店には来れないわね」
「どうしてだ」
「あなたのせいよ」
「……?」
首を傾げるライを尻目に、カレンはむすっとした表情で外を睨む。今のオーダーをキャンセルすることは容易いが、なぜだかそんな気分にはならなかった。たまにはハンバーグもいいだろう。そう思える。
問題なのは時間だ。カレンとライはこれから、シンジュクゲットーへ向かう予定だった。モノレールの時刻表は暗記している。このまま食事を続けていたら、直近の電車に間に合わなくなるのは明白だった。
その問題も、乗車時間を一つずらせば簡単に解決してしまう。ゲットーには今日中に行ければ良いのだ。余裕はある。
(……こういうのも悪くないかな)
眼下には普通の日常を楽しむ人々の姿があった。今日ぐらい自分もあの中に混じるのも悪くはないと思ってしまう。
普通の女子高生らしく。口元にはいつの間にか笑みが浮かんでいた。
しかし、これから二時間半後、カレンはこの選択を後悔することになる。
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