421:名無しNIPPER[saga]
2015/08/10(月) 09:51:09.53 ID:dDnsREuDO
「どこまでなら行ける」
歩きながらライが尋ねてきた。危険な区域には入れないため、行動可能な範囲を知りたいのだろう。
「徒歩で行ける距離なら安全よ。租界の近くでは派手な戦闘行為も出来ないから」
カレンの口からは具体的な説明が当たり前のように出てきた。まるで頻繁にゲットーへ足を運んでいるような口ぶりだった。
「……詳しいんだな」
品行方正なお嬢様が喋る内容としては違和感があったのだろう。ライが尋ねてくる。予想はしていたので、あらかじめ用意していた文言を披露した。
「もちろん。私の提案だもの、情報収集くらいするわ」
「そうか」
元から興味もなかったのか、ライはあっさりと納得した。再び沈黙が降りてくる。
二人とも黙ったまま二ブロックほど奥へ進み、そこでライが立ち止まる。開けた場所だ。シンジュクゲットーの大部分が良く見える。
乾いた風が頬を撫でる。眼下には濁った街並み。うごめく人々。先ほどカフェから見た光景と重ねると、やはり怒りと憎悪がやってきた。
──間違っている。何もかも。
眉間にしわが寄る。呼吸が荒くなって、ぎりっと歯が鳴った。また頭痛がやってくる。
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