439:名無しNIPPER[saga]
2015/08/10(月) 21:55:20.65 ID:dDnsREuDO
「残念だが、身を隠すしかない。君をこれ以上、危険な目には……」
ライの手を振りほどく。いつもは心地よいはずの声が、冷静な瞳が、今ではとても疎ましく思えた。
「あなたはどうして──」
そんなに冷静なの? なにも感じないの? どうして、いつも通りなの?
そんな疑問を投げかけようとした。だが、言えなかった。
ライの視線がカレンの背後へ向く。一機の<無頼>が強引に包囲網を突破しようと突っ込んできていた。
そんな単調な行動を、ブリタニア軍が許すはずがなかった。<無頼>は頭部に被弾し、バランスを崩す。向かってきた先は、カレンとライが隠れているビルだった。
激突。
地面が揺れる。両脇のビルから絶望的な音が響いた。建物の隙間にいたおかげでナイトメアに潰されることはなかったが、幾つもの破片が、飛礫(つぶて)となって殺到する。
大小さまざまなコンクリートの弾丸。両脇は障害物。逃げ道はやはりない。
──避けられない。
悟ってしまった。どんなに優れた反射神経を持っていても、どんなに高い運動能力を持っていても、この死の雨からは逃れられない。
数瞬後には全身を打たれ、致命傷を負うことになるだろう。
思わず目を閉じ、体を強ばらせる。悲鳴は出なかった。泣き声もだ。
謝りたいと思ったが、その相手はまだ諦めていなかったようだ。カレンの手を引き、押し倒す。そして自らを盾に、覆い被さった。
地面を叩く猛烈な音。衝撃が彼の体越しに伝わる。
無事だった。生きている。
1002Res/860.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。