455:名無しNIPPER[saga]
2015/08/15(土) 17:32:12.92 ID:96BNk38DO
戦う人間を間近で見た事がある。
怒りや憎しみ、敵意や殺意。義務や責任感。過去のトラウマ。または果てない野望を叶えるために戦う人達を知っている。カレンもその一人だ。
しかし、この少年は違う。
敵を罵ったり、嘲ったりもしなければ、自身の能力を誇示したりもしない。恐怖や動揺、混乱もない。何も表現しないのだ。
理解出来ない。
「蹴散らす。掴まっていろ」
当然の事のようにライは言った。驕りも油断も無い、事実だけを伝えるように。
敵の<サザーランド>は二機。向かって左側の機体はアサルト・ライフルを装備しており、右側の機体は大型の電磁ランスを構えている。味方が倒された事を知らされているのだろう。隙など微塵もなかった。
相対距離は一五〇メートルほど。ライフルで狙うには絶好の位置だ。敵の射撃を躱すつもりなのかもしれないが、どうしても動きは制限される。そうしたらあのランスの餌食だ。
ライは敵機を静かな瞳で見据えている。
その目が、やや上を見た。異変が起こる。
先ほど弾を注ぎ込んだビルの屋上。そこに設置されている球体型の貯水タンクが傾いた。射撃で支えを失っていたのだ。重々しく転がり──容易く落下する。その下にはライフルを構えた<サザーランド>の姿があった。
<無頼>が疾走する。
敵が異変に気付いた。慌てて回避機動をとるが、既に遅い。貯水タンクの下敷きにはならずに済んだようだが、中に入っていた水が衝撃でぶちまけられる。数年もの間、放置されて腐りきった茶色の液体が津波のように押し寄せ、二体の<サザーランド>を飲み込んだ。
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