634: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/26(土) 22:46:01.87 ID:rpLvuEADO
「言うことも聞くし、ちゃんとご飯も食べるし、変なこと言わないし……あと黒いし」
撫でられているアーサーは彼女の膝の上で丸くなりながらごろごろと喉を鳴らしている。カレンの方も笑みを浮かべて瞑目していた。お互いに上機嫌のようだ。
開け放たれた窓から入ってきた風が、彼女の赤い髪を揺らす。日差しを背に柔らかく微笑む姿はなんだか大人びて見えて、ライはカレンを無意識に見つめてしまっていた。
とても穏やかな光景だ。いつまでも見ていたくなる。
(記憶を失う前も、こういう日常があったんだろうか)
そんな考えがよぎった。過去の自分にも日常があったはずで、生きていた時間があったはずだ。誰かと一緒にいたはずだ。友人や恋人は──自信が無いが、少なくとも家族はいただろう。
(僕は──)
「ライ? どうしたの?」
意識が呼び戻される。カレンが心配そうにこちらを見ていた。
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