696: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/10/06(火) 21:19:18.18 ID:h2uoLNaDO
「でも、それだけじゃ駄目だ。結局、僕は誰かの善意が無くては生きていられない存在で……とても弱々しい。そんな今の状態が、どうしても嫌だ」
ライは手元の書類を見た。こんな物をどれだけ片付けたところで、恩返しになどなりはしない。どうすれば恩を返せるのか。金銭を用意すれば解決するような簡単な話でもなかった。
「君たちは正式な手順を踏んでこの学園にいる。でも僕は違う。いてもいなくても変わらない」
本当はいる筈の無い人間。だからこその疎外感であり、異物感であるそれらが付きまとうのは当然だった。
「そんなことないでしょ」
カレンは否定してくれたが、ライに自分の考えを曲げるつもりはなかった。
「スザクのいる職場では、僕の知識が生かせる。必要とされるのは、ただそれだけでありがたい」
「そうなの……?」
「どこでもいい。居ていい意味が欲しいんだ」
<特派>からの誘いは、一本の釣り針に等しい。今の状況から脱却できるのなら、考えなしに釣り針を飲み込んでも良いとさえ思える。
釣り上げられた先に何があったとしても良い。釣り上げた相手が誰であっても良い。
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