846: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/09(月) 23:22:17.97 ID:IXU7FTiDO
そんな自分は、はたして人間と呼べるのだろうか?
人間の定義とは何か? その種特有の遺伝子情報を有していればいいのか、人の形を取っていればいいのか、そんなことすら分からなかった。
鏡を見ていても疑問は晴れないので、ライは仕方なく汗に濡れたシャツを脱いだ。裸になった上半身から体温が抜けていくが、無視する。どうでも良かった。
シャワーはまだ浴びなくて良い。灯りもいらない。亡者のような足取りで窓の近くまで辿り着く。カーテンをずらし、空を眺めた。
薄い雲が漂っていて星は見えない。それでも風が強いせいか、雲の流れは速かった。細かく千切れた合間から、月がその顔を覗かせる。
美しいとは思わなかった。そんな情緒は欠落していた。これはただの確認だ。
目を覚まし、暗い部屋の中で空が明るくなるまでじっとしているのが、ここのところの日課だった。こうやって日々を過ごしている間にも時は巡り、月は満ちていく。何かを置き去りにするかのように。
出来ることは、ただ待つだけ。ライは空を見上げた。
満月は、もう近い。
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