850: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/10(火) 00:07:44.25 ID:RQrE+LDDO
追い風が吹いている。強い追い風が。
ゼロが首を縦に振れば、すぐにでも引き入れられる。こうしている間にもタイムリミットは迫って来ているのだ。カレンの中に焦燥感で形作られた炎が再燃する。
「あ……」
そのせいだろうか、強い視線に気づいたライがこちらを見た。目が合う。
意志の窺えない蒼い瞳。月を抱く夜の海にも似た静かな色。彼の貴公子然とした風貌も相まって、幻想的な美しさを宿していた。
まあ、確かに見た目は良いかもしれない。学園中の女子生徒達が噂するくらいに顔立ちは整っている。
「────っ」
しばらく見つめ合っていた事に気づき、惚けていた意識を引き戻す。首元から熱が上がってきた。自分でも顔が赤くなっているのが分かった。
気恥ずかしさが持ち前の対抗心を刺激し、『なに見てるのよ』とばかりに彼を睨みつける。見ていたのはこちらなのだが。ライは怪訝そうな顔をして前を向いた。
視線が外れたことに安堵しながらも、カレンは頭を抑えた。血が昇ったためか眠気は吹き飛んだが、疲労感は増えている。
近い内に、自分は本当に倒れるかもしれないとカレンは思った。
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