過去ログ - みく「死の港町にて」【モバマス×メタルマックス3】
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◆Freege5emM
[saga]
2015/06/28(日) 00:10:53.83 ID:nhj66epYo
●03-03
「……野良犬を拾った次は野良猫、懲りない人ね……」
黄昏の海陸風が流れるなか、二人の女ソルジャーが対峙する。
白兵戦には少し遠く、銃撃戦には少し近い距離。
みくは二人の様子を、さらに10歩ほど離れて眺めている。
両者のすらりとした体から延びる影法師は、沈みかけの太陽のせいで、いっそう細く長い。
美優はオキシドバレットを構えながらいつでも立射できる姿勢を保っていた。
対してのあは、愛車に寄りかかりながら楽に構えていた。
「そこの子猫ちゃん、あなたが美優とどんな関係かは知らないけれど、まぁ、想像はつくわ。
この人、このご時世に珍しく、自分にも他者にも甘い人だから」
「……いやに確信した言い方をするにゃ」
のあは、いつの間にか片手でギリギリ持てる程度のスプレー缶を取り出していた。
ソルジャーの武器の扱い方は、メカニック見習いのみくが見ると、手品師と区別がつかない。
「端的に言えば、美優は、こういう人間なの――」
のあの持つスプレーから、一筋の火花が散って、炎のようなものが爆発的に広がる。
スプレーの大きさに比して、常識をぶち壊しにする巨大な熱量。
ニトロビールのそれを炎と呼ぶなら、スプレーのそれはむしろ、火砕流に近い熱の塊だった。
「――美優さ――げっ、が、がほっ、おごっ……っ」
みくは、火砕流の射線に割り込む影の名を叫んだ。叫ぼうとして、喉の粘膜を焼かれた。
みくをかばって走りこんできた美優が奔流に立ち塞がり、
その中に飲み込まれる様が、みくにも見えた。
急激な温度変化で膨張した空気の風が、時間差でみくの上体を吹き払い、
みくはまた路上を舐める羽目になった。
「……美優、それがバオーバーブンガーから剥ぎ取ったシロモノかしら?
あなたが賞金を貰ったとオフィスで聞いたけど、間違いじゃなかったようね」
のあの声に、みくは目線を上げようとして、上でしつこく粘る空気中の熱に押さえつけられ、
ただ二人分の足だけを見て、美優が立ったままでいると気づいた。
「さすがの耐熱性ね。ドラゴンスプレーの熱も散らしてしまうの……」
「いたずらに人を試すような真似、関心しないわね」
銃弾や炎をぶつけ合いながら平然と会話するなんて……と、
みくはソルジャーという人種に呆れ果てた。
「……追い剥ぎやってる時点で、どうかと思ってたが、にゃ」
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