過去ログ - みく「死の港町にて」【モバマス×メタルマックス3】
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3: ◆Freege5emM[saga]
2015/06/14(日) 22:17:50.94 ID:RtIBe/voo

●01

ドラム缶の浮いた群青の川面には、眼鏡橋が映っていた。

橋の下に開いた地下道の出入口から、みくは外に出て目を細めた。
暗闇に慣れた目には、煙と雲に濁った昼前の空さえ眩しかった。



「おーい、泥棒猫! 朝っぱらから、また親方殿の罰をもらってたのかー」

港町の喧騒を割って、橋の上からみくへ声がかかる。

「うるさいにゃユッキ! 今は、アンタに売ってやれるブツを持ってないにゃ」
「おーおー、連れないねぇみくちゃん。あたしたち、同好のお仲間じゃないか」



上からの声の主――ユッキと呼ばれた女は、
懐からトランプに似た大きさのカードを出し、みくへ見せつけた。
トランプとの違いは、スートや数字の代わりに、奇妙な男たちの写真が印刷されていること。
ヘルメットをかぶり、木の棒を握り締め、全身ピンストライプというおかしな服を着ている。

それは、かつてベースボールと呼ばれた見世物をする男たちのカードだった。

だが、それを何枚も持ち歩いているユッキは、ベースボールが何かを知らない。
ただ、見た目が気に入っているという理由で、それを集めている。



「そのカードは、ほかの連中とトレードするがいいにゃ。みくは興味ないにゃ」
「あたしもさ。この格好のカードは、なんだかしっくりこなくてねー」

みくもベースボールや男たちに興味は無く、
カードのなかでも猫に似たマーク付きのものだけを集めていた。

それは数十年前、キャッツと呼ばれたベースボールチームの選手のカードであった。



「そうだ。みくちゃん、あんたその橋の下から出てきたってことは、
 どうせまた転送装置の整備やらされてたんでしょ。調子はどうだった?」
「ちょっと挙動が怪しくなってたけど、電力さえあれば稼働はするにゃ。
 そちらさん――クランの稼業にとっちゃ、不都合だろうにゃ」

みくはそのまま一方的に会話を打ち切り、ユッキから背を向けて歩き出した。



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