23: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/15(月) 22:21:42.33 ID:7IXBXgnJ0
「はぁ……稲毛海岸まででいいか?」
「えっ! いいんですか先輩? あとできれば千葉みなとまでがいいです〜」
顔をこちらにぐるんと向けて、喜びと驚きが同居したような声を出しつつ馬鹿な提案をしてくる。
一駅隣な上に方向真逆じゃねーか。
一駅分ならなんてことのないように聞こえるが、京葉線稲毛海岸駅から千葉みなと駅間は4km以上あり、やたらと長い。
元気な時なら考えなくもないが、今日は無理だ。
すげなく一色の提案は断る事にする。
「遠いから却下」
「えー……まぁ仕方ないか……。でもやっぱり先輩ってチョロ……あっ、頼りになりますね!」
「そこまで言ったらもうチョロいって言っていいからね?」
俺も大概こいつに甘いなとつくづく思う。いや、一色が甘え上手でもあるが。
それに、彼女に対して何も思うことはないか?と問われれば、答えはノーだ。
一色に生徒会長になることのメリットを提示し、生徒会長に仕立て上げたのは俺だ。
それに、ただ単純に彼女を推しただけではない。
雪ノ下と由比ヶ浜を生徒会長にさせないため。奉仕部の、あの空間を守るという目的のため。
つまるところ自らの願望を叶えるためだ。
奉仕部を守る――こんな綺麗なお題目を並べても、結果的に彼女を利用したということに変わりはない。
そして俺は間違えた。
以前とは違うはずだったのに。ただ、方向性が違うというだけで成長はしていなかった。
俺の選択が多くの人を変えてしまった。自分が影響力のある人間だなんて思わないけれど、事実、苦しんでいる人はいた。それをただ悔いている。
だからこそ思う。彼女のお願いを聞く事で清算しているのかもしれないと。それはまるで贖罪のようにも思える行為だ。
誰が、いつ許してくれるのかなんてわからないし、救いが存在するのかさえ知らない。
清算を終えたのか、まだ途中なのか。未だ終着点を探している。
それを決めるのは誰でもない。きっと自分なのだろう。
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