過去ログ - 八幡「贈り物には想いを込めて」
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44: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/16(火) 00:10:35.13 ID:9WL6O8ki0
「……そうだな、君に聞いても素直に答えてくれるわけないか」

戻るよ、と呟いて座っている俺の横を抜ける。そのまま教室の方へ体を向けて歩き出した。
その背中へ短く声を掛ける。

「……葉山、逃げるなよ」

半身だけ振り返って、含みのある笑顔を向けてくる。

「それはお互い様だろ?」

じゃあと左手を挙げて、今度こそ一言も発することなく冬の日の冷え切った廊下を静かに立ち去っていく。

その背中は、どこか立ち枯れた木を想像させるような、一抹の寂しさを連想させた。

葉山とすれ違うように戸塚がやってくるのがここからも見える。二言三言会話をしてから小走りで駆け寄って来た。

待たせてごめんね、と呟くのが耳に聞こえるが、そちらの方を向かなかった。
こちらをひょいと軽く覗きこんで、はっと何かに気が付いたあとに少し怯えたような声を掛けてくる。

「……八幡どうしたの? 顔怖いよ?」

「……なんでもねーよ」

戸塚は悪くないのに、こんな言い方になってしまう自分が嫌になる。
お互い様、ね……。

「わかってんだよ。そんな事くらい」

無意識なのか、冷え切った空き缶を強く握りしめていたのに気が付く。

それでもスチール缶はびくともせず、わずかなへこみを右手の掌の形に合わせて作り出しただけだった。
それが自らの力のなさを証明するようで、ひどく物悲しかった。

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