7: ◆D04V/hGKfE[sage saga]
2015/06/15(月) 21:41:27.81 ID:7IXBXgnJ0
「今日は依頼くるかな?」
右隣を歩く彼女がこちらを少し覗きこむように、身長差のせいもあり上目遣い気味に話しかけてくる。
「さあな。来ない方がいいんじゃねえの?」
「え〜、なんで?」
ぶーと口をとがらせて、先ほどと同様にこちらを見上げる。
歩調に合わせてリズミカルに髪が揺れ、覗きこんだときにさらりと流れた。
実際依頼なんてない方が良いはずなのだ。それだけ悩みを抱える生徒がいないとも言える。
しかし、依頼がない=悩みを持つ生徒もいない、という単純な等式は成り立たない。
人に言えない悩みだってある。相談するとしても、相談相手を選ばなければいけないような悩みもあるだろう。
少なくとも俺なら、知らんやつに何かを相談する気にはならない。
それに、奉仕部は大々的に活動をアピールしている部ではない。
あくまで平塚先生からの紹介などで、依頼者が訪問する場合がほとんどだ。ゆえに自発的に部室を尋ねてくる生徒はほぼいない。
……窓際族ってこんな気分なのだろうか?
「そうだな……依頼がない方が早く帰れるし、何より俺が楽できる」
「なるほど……って理由がすっごく自分勝手だ!?」
1秒でも早く帰りたいに決まってんだろ。今日は特に疲れてるしな。
由比ヶ浜が振ってくる他愛もない話に適当に答えつつ歩を進める。
由比ヶ浜主導で話は進み、それに俺が答えるスタイルは変わらない。
目的の場所が近づいてきた。西日に照らされ、やや紅色に光を反射した特別塔の廊下を進み、部室の扉を開ける。
がらりと抵抗なく開かれた扉の先には、いつもと変わらぬ様子の部室の主が背筋良く、椅子に足を揃えて文庫本を手にして待っていた。
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