77: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 00:38:11.21 ID:bJtf1eDj0
『言葉のままだよ。あたし、さ。ヒッキーのこといつも考えてるんだ。今なにしてるのかなーとか、なに考えてるのかなーとか?
授業中の暇な時とか、部活中とかもさ。色々ね 』
『……そうか』
やめてくれ、そう思っても口に出ることはなかった。いや口に出すことができなかった。
それほどまでに由比ヶ浜の顔から目が離せない。言葉に射すくめられてしまう。
『でもね、考えても考えても、やっぱりわかんないことの方が多くて……人の考えてることは簡単にはわからないって、もうわかってたはずなのにね?
それでも、あたしはヒッキーのことわかりたいって思うんだ』
『…………ああ』
やめてくれ。口が渇いて声がうまく出せない。
ゆっくりと、本当にゆっくりと言葉を紡いでいく。
わかって欲しい。理解されたい。その想いが滲み出る。
『あはは……何言ってんだろあたし。でもね、大変だけど、それでも“わからない”で考えを終わらせっちゃったら、やっぱりダメなんだと思う。
ヒッキーのこと知りたい、わかりたい。それで……あたしのこともわかって貰いたい。この想いはあたしの特別なんだ』
視界が靄が掛かっているようだ。何故か景色が滲んで見える。
『だから、ね……』
カバンのチャックを広げて、中から綺麗に包装された箱を取り出す。
一切音が聞こえない保健室内に、その音ははっきり響いた。
「いつもありがとう。あたしの傍にいてくれて。大切な想いを教えてくれて。本当に、ありがとう」
綺麗な笑顔だった。
溢れた涙が、一筋流れる。
そのまま頬を伝ってスラックスを濡らした。
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