89: ◆D04V/hGKfE[saga]
2015/06/17(水) 01:25:21.48 ID:bJtf1eDj0
バスが到着した。ハザードランプを点灯しつつ、停留所にぴたりと停車する。
先に前方の降り口が開き、運賃を清算しつつ数人が降りていった。
今度は乗車口が開き、由比ヶ浜が乗り込む。
車内アナウンスが備え付けのスピーカーから聞こえた。
夜間で道が空いているせいか、出発予定時間前に到着をしたため時間調整を行うらしい。
時間を確認すれば、もうあと1分も無いくらいか。
「ヒッキー」
「ん?」
入口に立ったままの由比ヶ浜を見る。
「あたしも頑張って作ったからさ……その、ちゃんと食べてね?」
不安そうな顔だった。単純に、そんな顔は見たくはないと思った。
明るく楽しそうに笑っているのが彼女らしいのだから。
そんな普段の顔が見たくて、俺も普段のように小馬鹿にしたように返す。
「そうだな。死なないように注意しなきゃな」
「あっもう!またあたしのことバカにしてるでしょ! バカヒッキー! ばーかばーか!」
「低レベルすぎるだろその返し……」
やれやれと呆れていると、アイドリングストップしていたバスにエンジンがかかる。
もうお別れだ。
扉から一歩離れて別れを告げる。
「じゃあな。また学校で」
「うん。またねヒッキー」
プシュという音とともに入口のドアが閉まり、彼女を乗せたバスは走り出した。
笑顔で、胸の前で小さく手を振る由比ヶ浜を 見えなくなるまでその場で見送った。
バスが角を曲がって完全に見えなくなってから、自転車に跨って家に向かって走り出す。
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