過去ログ - 向日葵「ふたりを繋ぐ夜の電話」
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14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/16(火) 00:26:33.69 ID:rcfS4V6Mo
今朝、小さな覚悟を決めて玄関を出ると、ちょうど櫻子も家から出てきたところでした。


靴をとんとんと整える櫻子をまず見て、トゲがもう一段階深く刺さった気がしました。おはようございますと声をかけると、「うん、おはよ」とだけ返ってきました。


ああ、なにか言われる。昨日のことについてなにか言われてしまう……それだけが頭を占めていた私に、櫻子は最初に昨日見たテレビの話を始めました。


べつに私はその番組を見ていたわけではなかったのですが、櫻子がやけに楽しげに話すのでとりあえず聞いていました。昨日のことを切り出されないように、ほどよく相槌を打ちながら。


そして、お腹を抱えて笑うほど面白かったらしいその話を聞いているうちに、私たちは学校に着いてしまいました。教室にくれば櫻子は他のお友達と話を始めるため、私との会話はそこでいったん終わります。


ほっと一息ついて席に付くと、トゲが痛みも無くするっと抜けていったのを感じました。櫻子はどうやら、昨日のことは忘れていたようです。私は眠れないほど悩んでいたことだけど、あの子にとっては本当になんでもない、些細な一分程度の電話。なにか雑誌でも読みながら受け答えていたのなら、一晩眠ったあの子の頭には残っていません。


そこからはもう、本当にいつもどおりの学校生活しかありませんでした。むしろ櫻子はいつも以上に元気そうにしていて、ちょっとだけ心配だった帰り道でも、昨日の話はぶり返されずに事なきを得たのです。心に刺さったトゲは、もうどこにもありませんでした。


しかし、夕飯を作って、楓と一緒にご飯を食べて、先に宿題を済ませて、長めのお風呂に浸かった今……私の傷跡は、今度は別の痛みを訴えだしたのです。



(すっかり忘れちゃうって……どうなんですの?)


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