過去ログ - 真姫「にこちゃんと夜空に架かる虹を見るわ」
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12:名無しNIPPER[saga]
2015/06/17(水) 20:50:00.96 ID:XL12Gej+0
彼女の火照った体をシャワーで洗い流しながら、私は彼女の家族がこんな様子を見たら何と言うだろうと考えていた。

◇◇◇

半年前、久しぶりに訪れた矢澤家で出迎えた彼女の母親は愕然とするほどやつれており、私は学業や仕事の多忙さを理由にして頻繁に訪れなかったことを後悔した。
結局、私は怖かったのだろう。だからにこちゃんから逃げていたのだ。
記憶の中の姿が……かつてあの音ノ木坂で、泣き、笑い、熱くアイドルへの情熱を語ったあの生き生きとした姿がかき消されてしまうような気がして。

リハビリテーション病院を退院しても、にこちゃんの後遺症が良くなったわけではない。
介護保険が適用されても、訪問ケアを受けられるのは週に3日、それも数時間で、それ以外は家族が彼女の面倒を見なくてはならない。
もうすぐ大学受験の妹と思春期に入った弟を抱え、家計をやりくりするだけの収入を確保し、日に日に悪化するにこちゃんの癇癪に対処する……

そんな無茶が土台、成立するはずはなかった。

「にこちゃんは私が引き取ります」
そう告げた時に彼女の母親の顔によぎった安堵の表情を非難する資格は、私にはない。
その時私の頭にあったのも、にこちゃんとその家族を助けたいという善意ではなく、それどころかにこちゃんと一緒に居たいという私欲ですらなく、ただ、これで医局から逃げ出すきっかけができたという安堵の気持ちだったのだから。


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