17:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:06:07.18 ID:MUuaVWOfO
「治る見込みは……どうなんでしょう」
男の人が憔悴しきった顔でお医者さんに訊いている。
18:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:06:56.85 ID:MUuaVWOfO
「――原因不明の重度昏睡状態にあります。外部からの刺激に、脊髄反射以外の反応を見せません。
それ以外の体機能はすこぶる健康なものの……この状態が続くと、遷延性意識障害となるでしょう」
「そ、それはつまり……」
19:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:07:32.45 ID:MUuaVWOfO
アタシといえば――未だにあまり実感が湧かない。
もちろん、ショックはショックだけど、アタシは実際ここにいるんだもん。
他の人に認識してもらえるかどうかはともかくとして、自我はきちんとここに在る。
20:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:08:08.77 ID:MUuaVWOfO
……あれ?
何も起こらない。
単に、ユーレイとしてのアタシが、自分の本体をすり抜けてふわふわ浮いているだけ。
21:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:09:16.36 ID:MUuaVWOfO
え……これヤバくない……?
もし、ずっとユーレイのままでいなければならないとしたら……
どうしよう、アタシ。
22:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:11:47.92 ID:MUuaVWOfO
「プロデューサー!」
「状況はどうなってんだ!?」
23:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:12:48.54 ID:MUuaVWOfO
でも、ポートレイトで披露していた可愛さはどこへやら、今は焦りの色しか見られない。
二人は、うなだれる男の人と、ドアに仰々しく書かれた『集中治療室』の文字を見て、絶望に顔を歪めた。
「そんな……まさか……」
24:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:13:37.43 ID:MUuaVWOfO
「お前たち、まだブーブーエスで別件の収録が残っているだろう。社長に引率を頼んでおく。
ひとまずタクシーで局へすぐ向かってくれ。明日も早いから、終業後は直帰するんだ」
ショックを受けていながらも、監督者らしいスケジュールの把握ぶりでアイドル二人に指示を出す。
25:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:14:37.56 ID:MUuaVWOfO
そんなわがままを、プロデューサーは強い調子でたしなめる。
「お前たちはアイドルだろう! プロだろう! カメラの向こうに、お前たちを待っている人々がいるんだ!
たとえ仲間が斃れようとも、仕事中は振り返らず前を向け!」
26:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:15:46.80 ID:MUuaVWOfO
ギュッと苦しそうに目を閉じ、小さく頷いた彼女たちは、すぐさま回れ右をして駆け出して行った。
その悲壮な覚悟の顔は、同性のアタシから見てもキレイだった。
プロ根性ってすごい。自分も同じ立場であろうことを棚に上げて、アタシは感心している。
27:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:16:14.50 ID:MUuaVWOfO
アタシは肩を落とし頭を垂れて、自らの腕をぎゅっと抱き締めた。
怖い。
自分は、これからどうなるんだろう。
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