3:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:54:39.48 ID:MUuaVWOfO
 アタシ、気付いたときは、どこかの大きな道路にいたの。 
  
 正確には、道路の上空……っていえばいいのかな。 
  
 よく3Dのゲームとかで、操作する主人公を斜め後ろから俯瞰してるでしょ? あんな感じの視点だった。 
4:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:55:22.62 ID:MUuaVWOfO
  
 で、アタシの横では、スーツを着た男の人が泣き叫んでて。 
  
 大の大人が哭くなんてみっともないなぁ、って呆れちゃったけど。 
  
5:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:56:06.41 ID:MUuaVWOfO
  
 自分の名前は憶えていない。 
  
 いや、そもそも何者なのかもよくわかっていないんだ。 
  
6:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:57:10.41 ID:MUuaVWOfO
  
 この身体になって、既におよそ四時間くらいが経ったと思う。陽が西へ傾いてきた。 
  
 あてどもなく漂い、いまアタシは、どこかの公園のベンチに座っている。 
  
7:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:57:42.29 ID:MUuaVWOfO
 ……そうは言っても、どうやって調べよう? 
  
 物に触れられないから本や資料は漁れない。 
  
 誰かが立ち読みしているのを覗き込む? それとも電気屋に行って、テレビを眺めようか。 
8:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:58:36.85 ID:MUuaVWOfO
 まあ、救急車が飛び込む大きな病院なんてそこまで多くはないはず。 
  
 しらみ潰しに近場から覗いていこうかな。 
  
 何となくだけど、自分以外の要素に翻弄されるより、能動的な方がいい。 
9:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 22:59:31.63 ID:MUuaVWOfO
  
  
 ―― 
  
 物に触れられないのは不便だけど、或る意味ではとても便利だ。 
10:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:00:01.99 ID:MUuaVWOfO
 その過程で、他の病院や病室の、どうやら“視える”らしい一部の人には驚かれてしまった。 
  
 そりゃーさすがに、壁からいきなりにょきっと出て来たユーレイに視線を向けられ、 
  
 「この部屋も違う。はい、次」 
11:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:01:08.06 ID:MUuaVWOfO
  
 アタシの“本体”が寝ているICUは、隔離された大きな部屋。 
  
 何人もの患者がずらりと寝かせられていて、その誰もがぴくりとも動かない。 
  
12:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:01:43.66 ID:MUuaVWOfO
 頭に白い布が被さっていないということは、命は保ったようだ。よかったよかった。 
  
 じゃあアタシは幽霊じゃなくて幽体離脱ってことかな? 
  
 うーん、めんどくさいから『ユーレイ』でいいや。 
13:名無しNIPPER[saga]
2015/06/18(木) 23:02:57.91 ID:MUuaVWOfO
 ただ、その頭部は、包帯でぐるぐる巻きになっている。 
  
 近づいて、まじまじと眺めてみた。 
  
 かなり幅広の包帯だ。救急箱に入っているものとはまるでレベルが違う。 
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