過去ログ - 水嶋咲「クロスドレス」
1- 20
2: ◆8HmEy52dzA[sage saga]
2015/06/18(木) 23:20:25.18 ID:jPdfGr6q0


01.


「はぁ……」

勤務中だと言うのに、肺腑の奥から特大の溜息が押し出される。
もちろん、お客さんはいないからこその行動とは言え、気が滅入ることには変わりはない。

悩みの種の原因は明確だ。
これ以上ない程に理解してる。
でも人間、原因がわかっていても解決しないなんてことは日常茶飯事と言ってもいい。
問題点が明らかになっている、というだけで物事全てが上手くいくのならば、人はこんなにも悩んだりしない。
その障害をどうやって乗り越えるかによって、人は経験という名の成長をして行くんだ――と、あたしは月並みにも思っている。

人生が山に擬えられることは多々ある。
なるほど、苦労して登った山が高ければ高いほどに、下りる時は楽だ。
あたしも今、アイドルとメイドという二足の草鞋を履きつつも高い山を登っているから、なんとなくだけど、わかる。
その山の頂はどこなのか、果たしてその先には何があるのか、今のあたしには到底わからないけれど、登ってみる価値は充分にある。
そう思わせる何かがあるだけで、登る理由としては充分だ。

でも中には、越えたくないどころか関わりたくない類の山だってあるのだ。
触らぬ神になんとやら。
君子危うきにうんたらかんたら。
あたしはバカだけど、わざわざ面倒ごとに巻き込まれに行くほどに破滅願望はないつもりだ。
と、

「……いつもの元気がないようですが、何か悩み事ですか」

「ひゃあ⁉」

「おっと」

急に背後から声を掛けられ、前のめりにこけそうになった。
荘一郎がホールケーキを片手で高所に除けながらもう片手であたしの胴を抱く。
悲鳴が男バージョンにならなかったあたし、偉いぞ。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
19Res/26.98 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice