9: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/06/18(木) 23:31:21.00 ID:jPdfGr6q0
04.
決めなくちゃいけないとは言え。
「しんどいよ〜……」
そう簡単に行くのなら、最初からこんなに悩んでないのだ。
「……どうしたいんだろ、あたし」
それが一番の問題だ。
黒野くんに真実を打ち明けるのか。
はたまたアイドル水嶋咲として断るのか。
第三の選択肢として黒野くんの想いに応える、ってのもあるけど、さすがにそれはあたしにはムリだよね。
女装は好きだけど、あたしにそんな趣味はないし、黒野くんだって女の子の水嶋咲を好きになったんだから。
「はぁ……」
思わず溜息が出る。
黒野くんに告白されたあの日から、何度目かもわからない溜息だ。
自分のことなのに自分の意志がわからない。
結局のところ、あたしは何を選んで、どうやって生きて行くべきなのだろう。
男が女の子の格好をするなんて、変だってわかってる。
けれど、好きなものは仕方がない。
それを否定してしまったらあたしはあたしじゃなくなる。
女装はやめたくない。
でもアイドル水嶋咲を好きになってくれた黒野くんを裏切りたくもない。
アイドル水嶋咲と、男の子の水嶋咲の二律背反を成立させる答えなんて、あるのだろうか。
「何をブツブツ言っておるのだ」
「うわあああぁぁぁっ!」
急に背後から声を掛けられ、思わず素が出てしまった。
「な、なんだ、何事だ!」
と。
フィッシュアンドチップスを片手に慌てふためくアスランがいた。
「び、びっくりした……なんだ、アスランか」
「なんだとはなんだ。先程からいたぞ」
どうやらアスランが控え室に入ってきたのにも気付かなかったらしい。
……重症だね、あたし。
「悩みごとか」
「まあね……」
いつもの元気も出ない。
元を正せば、あたしが原因でこんな状況になっているのだけれど。
それでも、やっぱり答えは出ない。
「悩みなどパピ族の末裔たるサキらしくもない」
パピ族って。
「ピプ族だったか? まあいい、食え。腹が膨れればいい考えも浮かぶであろう」
言って、油モノを貪りながら勧めてくるアスラン。
アイドルにとって高カロリーは厳禁だって言うのに……。
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