38: ◆KBQRk2HV1Y[sage saga]
2015/06/21(日) 00:15:03.99 ID:1f7CifIC0
私も元は人の子だ。
親が居て、兄と姉が居て、家があった。
もっとも、兄姉は二人とも苦手だったが。片方には、性的暴行まがいのことまでされたし。
まあ、それでも紆余曲折あって、今では立場である艦娘になり今の鎮守府に配属になった。
そして、私と不知火は知り合った。
頭が良くて見栄っ張りで、けれどいつもどこか抜けている私の妹艦。
——私たちはお互いに相手の本当の名前を知らない。
私達は今や、大いなる武勲を挙げた駆逐艦の遺伝子を継いだ艦娘。
戦うために生かされている兵士であり、使い捨ての兵器。
しかし、それと同時に血も涙も流す——人間。
そう——私達は人間でもある。
人間らしさというものを見失い、ただ戦う機械と化していた私にそれを思い出させてくれたのが、他でもない不知火だった。
* * * * * * * * *
『大破進撃』——適正人数が多く、頭数の多い駆逐艦を使ってよく用いられる戦術。
ある時、海域制覇まで後少しの所で、私は敵の攻撃を受け、大破した。
作戦司令官からの命令は——進撃。
すなわち私の生死は問わないからとにかく戦果を上げろという事。
ところが、その命令に対して、同じ隊に居た不知火は、
旗艦である自らを撃って、進撃を作戦上進撃不可能にした。
司令官は当然激怒、不知火は謹慎に処せられた。
私は彼女の行動が不思議でならなかった。
謹慎中の彼女に会いに行き、
『自分は沈んでも構わなかった事』
『他人を庇って不利益を被る理由が分からない』
と正直な気持ちを彼女に伝えた。
すると彼女は——普段の鉄面皮はどこへやら、彼女は大粒の涙を流しながら私を殴った。
『自分の命ぐらい、自分で大切にしてください……』
それからだった、私が彼女に興味を持つようになったのは。
それから幾つかの月日とやりとりがあって、不知火と私は、今こういう関係にある。
不知火「陽炎?陽炎!その……大丈夫ですか?」
陽炎「大丈夫って……何が?」
知らず、涙を流している自分に気づいた。
不意にものすごく胸が切なくなって、不知火をより一層強く、抱きしめる。
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