過去ログ - 万里花を愛でるニセコイSS「ハナヨメ」
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14:名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:25:37.85 ID:EUGrH/Tp0
自分に何かができるわけではないのかも知れない。
だけどせめて。
それならば、今回万里花が抱いた夢ぐらいは叶えてやりたいではないか。

ガタッと椅子を鳴らして、楽は勢いよく立ち上がった。

「ら、楽様……?」
手の甲で涙を拭い、鼻をすする万里花。

この顔を、今日本当は写真に収められるはずだったあの輝く笑顔にするために。

「悪い、万里花。すまねえけど、しばらくここで待っててくれねえか?」
「え……? あ、あの、楽様、どちらに……?」

「俺に何ができるかはわからねえけど、やれるだけはやってみる。」
そう言うと、楽は伝票を引っ掴み、大急ぎでレジで代金を支払うと店の外に走り出していった。


独り残された万里花は、しばしあっけにとられたあと、涙を浮かべたまま、くすりと笑った。
楽のことだ、きっと落ち込んでいる自分のために何かをしようと走り出していったに違いない。

いつだって優しくて、どこか不器用な男の子。
そんな風だから、万里花は彼のことが大好きなのだった。

だからこそ、万里花は心の底から怖れていた。


彼とともにいつか幸せな結婚式を挙げて、とびきりの笑顔で純白の衣装を見にまとう花嫁になるという夢――それを諦めなければならない時が、来るかもしれないということを。


「楽様にはこんな姿、見せるつもりではありませんでしたのに……」

彼の記憶の中ではいつだって、元気で笑顔の万里花でいたい。
いつまでも、自分の笑顔を覚えていてもらうために。

目が腫れてしまっているかもしれないけれど、楽が戻ってきたらできる限りの笑顔で迎えよう。
目尻の雫を拭うと、万里花は大きく息を吸い込んだ。



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