過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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名無しNIPPER
[sage]
2015/08/07(金) 00:29:08.58 ID:RDmSM0VC0
>>245
「豊凶手術」
「そこのあなた、」
怪しげな声に足を止めた。
顔を隠した男か女かも判らない人間の前には、虫眼鏡がひとつ置かれている。
以前なら無視をするところだが、あいにく暇を待て余していたので、乗ってみることにした。
「ずいぶんと苦労されてますね?」
見てくれからもわかるだろう。今の自分は浮浪者そのものだ。
「職なし、家なし、家族縁者もなし、懐には小銭のみ、いやかろうじて札が一枚、」
なかなかの目を持っているようだ。
面白い。何が聞けるだろうか。
とりあえず、ぽつりと置かれた丸椅子に腰掛ける。
「ふむ、この先はおそらく何もないでしょう。
よくも、悪くも、何もない」
告げる声は先ほどの声よりも低く、太い。どうやら男のようだ。
男が耳慣れた音で知らない言葉を発した。
「ホウキョウ手術受けますか?」
「ああ、『豊胸手術』ではございません、あなたに胸は必要ないでしょう?
『豊凶手術』、あなたに必要な『豊』、多すぎる『凶』と引き換えに、差し上げましょう」
『凶』をもらってどうするんだ。
「『凶』は、意外とほしがる人がいるんですよ。
自分用にほしがる人はいませんがねぇ。
『豊』と言いつつ『凶』を渡してくれ、と事前に託けられてですね、いらっしゃるんですよ、
『凶』を渡したい人を連れてね、『豊』がもらえると、ね」
ふふ、と低い甘い声で嗤った。
顔は見えないが、きっといやな笑みを浮かべているのだろう。
「先ほどいらしたお客さんで、ちょうど『凶』がなくなりまして。
そんなところに『凶』を山ほど背負ったあなたがいらっしゃった。」
一呼吸、置いて、低い声がさらに低くなって甘い声がさらに甘くなって、
厭らしい笑みを浮かべているだろう声で告げる。
「いただけませんかね、その『凶』、お礼に山ほど『豊』を差し上げますから。」
どうやって?
「何、簡単です。
私の手で、あなたの髪と、血をいただきます。
その血に浸した髪を、必要としている人にさしあげるんですが、
間に人をはさんではいけません。
仲介した人がもらったことになってしまうので、必ず渡したい人を連れてきてもらわなければならない」
「ああ、ありがとうございます。これでしばらく商売が続けられます。
では髪を先にいただきましょう。
ちょうど伸びっぱなしですからね、ついでにさっぱりできていいでしょう」
「首周りもすっきりしましたから涼しいでしょう。
では次に血をいただきましょう。
血を渡す、ということにびくついてらっしゃいますねぇ。
なに、ほんの小さな傷をつけて出る血で十分です」
「ああ、失礼、髪を浸せるだけの量が必要だったのを忘れてましたよ」
嘘付け。引き換えの『豊』はどうなる。
「ええ、この先にきっと待ってますよ、たぶん、現世よりましな来世が」
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