過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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305:名無しNIPPER[sage]
2015/08/21(金) 18:02:24.31 ID:SO/wQQKgo
>>304「脳漿に巣食う」

――脳をうぞうぞと這い回る、おぞましい、忌々しい蟲。
俺の頭は、そいつに巣食われてからおかしくなっちまった。
どうしようもなく頭と顔が熱い。風邪でも引いたみたいだ。
自分が、いつ何をするかも分からない。
いつ、無意識に言葉が飛び出るかも分からない。
心臓が早鐘を打っている。死んでしまいそうだ。

「どうか、されましたか?」

びくりと、体が跳ねる。
――凛とした声。
黒の、艶やかな髪。ほっそりとした手脚。整った顔。俺には眩しすぎる笑顔。
間違いなく、彼女だ。
何故だ、自然体でいれば良いのに。
口が開いたり閉じたりして、声が出せない。
そんな俺の様を見て、彼女はくす、と笑った。

「もう、おかしな人ですね。どうかしたんですか?」

顔が近い。
鼓動が限界まで速くなる。
心臓発作で死んでしまいそうだ。いっそ死んでしまいたい。

「……ん、ちょっと温いですね」

冷たい手が額に当てられる。
言葉が口から飛び出そうになるが、どうにか止めた。
嗚呼、今、俺の顔は真っ赤になっているのだろう。

「……本当に、風邪引いてそうですね。お大事にしてくださいね?」

そう言って、彼女は遠ざかっていく。
……また、蟲が蠢きはじめた。
彼女と喋っているときだけは、蟲は大人しい。
身体に熱が取り戻される。心臓がまた、早鐘を打ち始める。
糞。こんなことになるのなら、俺は彼女に出会いたくなかった。

――何故だ。

――何故俺は、よりにもよって、彼女に恋を。

――叶わない悲恋は、俺の脳漿に巣食い、蟲のように這いずり回る――。





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