過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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36:名無しNIPPER[sage]
2015/06/25(木) 13:20:52.64 ID:nYLAnweHO
>>25

気がつけば朝になっていた。瞼にこびりついた目脂を剥がすと、指先にゴキブリの子供が這い回っていた。
うぅん。と唸りながらそれを振り払って立ち上がり、あたりを見渡す。

枕元で佳子が俺を見つめて微笑んだ。

「おはよう。今日も美しいなお前は。」

ここが俺の住む家。築35年。電気ガス水道は全て止まっている。

妻は15年ほど前に息子を連れて買い物に行くと言ったきり帰ってこ無い。

俺は事業に失敗し、全て失ったのだ。1人の寂しさを紛らわすため、ごみ捨て場から廃品を集めて暮らした。
佳子はごみ捨て場から持ってきた俺の最もお気に入りのものだ。
随分前に流行った女児用の着せ替え人形だが、俺にとっての価値は変わら無い。

この大きな瞳が俺を見つめてくれている。俺は1人じゃない。さぁ、今日も1日頑張ろう。

錆び付いた冷蔵庫とテレビの間を通り、玄関を抜けるとこの町の町長が待ち構えていた。
佳子が来てから近隣住民がこの家をゴミ屋敷と呼ぶまでの間に、時間はほとんどかからなかった。

町長がこのゴミを早く片付けろと迫る。

周りの窓から覗く住人は俺を汚らしい目で見ている。

だが、ここにあるのはゴミなんかじゃない。財産だ。佳子たちがいるから俺はまだ負けちゃいないんだ。

事業が失敗して俺を負け犬と罵った奴らを見返してやるんだ。ここからまたやり直すんだ。



だが、町長の背後から男たちがゾロゾロとやってきて、俺の家に勝手に足を踏み入れた。

「何をする!止めろ!俺の家だぞ!」
掴みかかろうとするが、屈強な男たちに俺は跳ね飛ばされた。

奴らは俺の財産をどんどん袋に詰めていく。冷蔵庫もテレビも電子レンジもラジオも何もかも持って行こうとする。

「やめろ!やめてくれえ!おれのモンだぞ!返せよ!」
奴らは俺の寝床に入り込むと、布団を乱雑に丸めて袋に詰めた。拍子に佳子が弾んで奴らの足元に転がる。

佳子に気付いた奴らは俺と彼女を交互に見てせせら笑う。

マスクの上からでも下卑た笑いがはっきり聞こえた。
奴らの足が佳子の腹を踏んづける。

「な、おいやめろ!佳子を離せ!俺の家族だぞ!彼女に何かしたら承知しなきからな!!
本当の本当だぞ!ああぁいけない!!そんなこと!!!足をどけろよ!!!
ああああああああああああああああああ!!」

ぐきり という音がして、佳子が 割れた。
首が取れてコロコロと転がり、俺を見た。
彼女の目はもう何も語りかけてくれない。

「ああ...酷い...なんてこと....あ、ああああ!」

俺のものを粗方持っていった奴らの会話が木霊しながら脳髄に響く。


「なんだいこいつは?」

「事業をつぶしちまった挙句カミさんも子供連れて出て行っちまったんだとよ?
なーんも無くなって、貧乏になって、挙句こんな人形にお熱になって最後はこんなザマさ。」

「ひー、怖いっすねー。俺、将来不安だったんスけど、これよりはマシだなって思うとなんか希望もてました!」

「そーそー、その意気だ!下には下がいるもんさ!
お前はまだまだ敗けてないさ。
さ、ゴミ掃除も大体おわったな。
さっさと飯でも食いに行こう。」

「そうっすね〜!んじゃ行きますか!
じゃぁなー、負け犬。」
「社会のゴミと負け犬、回収かんりょぉ〜〜!」

おれはフラフラと立ち上がると、割れた酒瓶の口を持って振りかぶった。
そうして奴らの1人の首にささくれ立ったガラスの刃を差し込んだ。
噴水のような血が奴から吹き出した。
奴は死んだ。負けた。 俺は負けてない。俺は勝った。勝った勝った。勝った。


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