過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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名無しNIPPER
2015/06/27(土) 00:30:16.77 ID:WakEd88AO
>>42
『月の沈まぬ空の下』
雲一つない満月の夜。
天空には真円の満月が煌々と輝いている。
月は、退屈していた。
眼下の惑星にはただ夜の黒と昼の青の半分に分割された海だけが広がっている。
全方位三百六十度をぐるりと見渡しても、遥か彼方の水平線まで、船影ひとつ、島影ひとつない。
かつて、この星をある種族が支配していた頃は、夜であろうと全ての陸に文明の灯がともり、空の星々を写しとったように陸地もまた煌めく輝きに満ちていたものだった。
いや、海の上でさえ、昼となく夜となく、あまたの船が行き来し、その目まぐるしさに月は目眩がするような気分になったものだった。
それが今やどうだろう。
ただひたすらの、海。海。海。
水。水。水。
月は心の中で、何度めになるか知れぬ溜め息をついた。
自分はあのちょこまかと動く、騒がしい種族が愛しくて。
わざわざ自分を訪ねてきたことが嬉しくて。
ほんの少し、近付いて眺めて見ようとしただけなのに。
己の公転と相手の自転が見事に釣り合ってしまった。
あまりにも近づき過ぎた結果、相手の海の水のほとんどは己の側に引き寄せられ。
かつて文明の煌めきに満ちていた大陸の全ては水の底に沈んでしまった。
今の月から見えるのは、ただ水のみに覆われた球の半面である。
あの種族はやはり滅んでしまったのだろうか。
あるいはこちらからは見えぬあの裏側で、案外楽しく、賑やかにやっているのだろうか。
月は代わり映えのしない水ばかりの退屈な眼下の景色を眺めながら。
また、心の中で溜め息をついた。
fin.
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