過去ログ - タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ part3
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名無しNIPPER
[sage]
2016/03/17(木) 14:46:12.79 ID:PmtfZAdVo
>>106
「運命にケンカを売るだけの簡単なお仕事」
――それは、唐突な出来事だった。
彼女が車に轢かれた。即死だったらしい。
俺は泣いた。泣き続けた。涙が枯れたころに、俺は神と運命を呪った。
生きる意味を失ってしまった俺は、何の躊躇いも無く手首に包丁を突き立てた――
――気がつけば、時計の指す日付は昨日のものとなっていた。
――目の前で、彼女が死んだ。
一緒に帰宅する途中、唐突に、横から突っ込んできたトラックが、横で歩いていた彼女を撥ねた。
次の瞬間、ボン、と大きな音がしたかと思うと、俺の意識は途切れた。
――目の前で、彼女が死んだ。
咄嗟に彼女を押し倒し、横から突っ込んできたトラックを間一髪で避けると、彼女が、頭から、血を流していて。
次の瞬間、ボン、と大きな音がした。
――また、彼女が死んだ。
今日は別の道を歩いて帰ったのだが、通り魔が彼女を刺した。その柔らかそうな生白いお腹から、真っ赤な、ペンキのように真っ赤な、血が、流れ出ていた。
呆然と立ち尽くしていると、お腹に冷たい感触が感じられて、あたたかい血が、流れていて、倒れて、瞼を、閉じ、て――
――いっそのこと帰らなければいいと、勇気を出して普通のホテルに二人で泊まった。
夕食を食堂で摂っている時、ガスの嫌なにおいがしたときにはもう遅く、轟音が響き、次の瞬間、熱風と爆炎が迫ってきて。
―― 一緒に帰りたいという彼女を制止し、一人で帰った。
俺の行動が原因かもしれない、そう思ったが、次の日、ニュースで彼女の名前が映っていた。
やっぱり駄目だった。俺は死んだような目で、泣くことも無く、手首を包丁で深く切り裂いた。
――あれから、どれだけ彼女が死ぬのを見てきただろう。
まだ数十回の気もするし、数千回見てきた気もする。おそらくどちらも合っていないだろう。
彼女の死ぬ姿を何万回も見てきて。
正直、狂ってしまいそうだった。
俺は、俺もしくは彼女が死ぬ当日の朝にしか戻れない。
それ以前の行動が原因で、彼女が『死』という運命に定められたのであれば、その運命は動かしようが無かった。
憶測の域を出ないが、俺はそれを念頭に置き、様々な行動を起こしてきた。
彼女が生きられる時間が、数時間、数日、数週間、数ヶ月と伸びて行き、だんだんと彼女の笑顔を見ることが出来る時間が増えていった。
それが嬉しくて、俺は正気を保っていられた。
しかしそれは、本来因果律を無視した、運命に逆らった行動だ。
運命は、排除する力を持つそうだ。
逆らうものを排斥し、取り除く。
運命に逆らう者を殺し、世界を正常であるようにしようとするそうだ。
そして実際、俺が死んだことも何回かあった気がする。
でも俺は、何回運命に殺されようが何をされようが関係無い。
それは俺が運命に逆らうのを止める理由にはなり得ないし、死んでもその日の朝に戻るだけ。
俺は、彼女が死ななくても良くなるまで、死に続ける。
ただ、彼女に生きていて欲しい。
ただ、彼女の眩しい笑顔をずっと眺めていたい。
だから俺は、今日も運命にケンカを売り続ける――
終
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